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→俳句作品

中村安伸の俳句作品をご紹介いたします。

→「十万億土」(20句)| →「黝き俊寛」(20句)| →「ダンスホール瀧」(30句)

→「ほとんど鉄」(50句)| →「日と月に」(20句)|→「管弦法」(30句)

→「記念日俳句十二月」(31句)| →「記念日俳句十一月」(30句)| →「記念日俳句十月」(31句)

→「記念日俳句九月」(30句)| →「記念日俳句八月」(31句)| →「記念日俳句七月」(31句)

→「記念日俳句六月」(30句)| →「記念日俳句五月」(31句)| →「記念日俳句四月」(30句)

→「記念日俳句三月」(31句)| →「記念日俳句二月」(29句)| →「記念日俳句一月」(31句)

→「天地開闢」(20句)| →「行軍録」(20句)| →「南蛮図」(20句)

→「鏡の間」(16句)| →「資生堂」(20句)| →「手紙は箱に」(30句)

→「樹海」(30句)| →「紅梅白梅」(8句)| →「胎風紋」(30句)

→「戸締り」(7句)| →「ガラスの部屋」(30句) | →「蝶番」(5句)

→「顔見世」(5句) | →「ダンス・ダンス」(5句) | →「菩提」(5句)

→「軽業」(5句) | →「さるのこえ」(5句) | →「水いらず」(8句)

→「恋より梱包」(30句)| →「大野一雄 頌」(8句) | →「null・・・り」(10句)

→「東京23区」(23句)| →「椿佛集」(20句)| →「えんかるた」(15句)

→「ラブホテル」(30句)| →「豊胸術」(40句)| →「太陰暦」(30句)
「十万億土」(2006)
→「豈」44号

大いなる車輪近づく水の秋

鵙飛んで余白を食べる近江かな

秋高し近江は青を重ねたり

近海を深夜台風生き急ぐ

十万億土に秋の団扇がひとつきり

コスモスや深海を行く盾を得て

ひとひらの古材を焦がす紅葉かな

青空を窓が汚して南洲忌

蛇となる前のをみなを鏡の間

頼朝にかさなる馬の彼誰時

治世とは髪型のこと赤蜻蛉

秋風の蔵にをみなと黒山羊と

鬼灯の枯れてイスラム寺院かな

幼帝の包まれてゐる寒き綿

ガラス器に罪のひとつとして牡蠣は

背表紙を剥けば枯野となりにけり

討入や少女漫画の花泡立つ

青きもの積みて青空聖誕祭

冬青空力士の妻は天使かな

モスクワ郊外のやうにがらんと冬晴れ

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「黝き俊寛」(2006)
→「豈」43号

新緑はあたまのわるい湯気の中

昼顔の奥へ切手を貼りにゆく

牡丹の蔭に洛中と洛外と

一級河川たんぽぽに感染す

葉桜や詩歌の国に終電車

葉桜や馬をうらがへした辻に

攝津忌の十年前の徹夜かな

塔を塗り分ける恋とも尿意とも

水脈の末端として夜の新樹

南風にまかせつきりの連歌かな

掬はれて少しく泳ぐ心太

昼顔や交響曲にやや足らぬ

式年遷宮おまへの奥の大雷雨

天堂にダンテの拾ふ定期券

仮眠する紙の牡丹の一室に

闘牛の角にあつまる黄泉の雲

薔薇園を銀座のやうに歩くかな

水底にからくれなゐの三輪車

鬼とならむ配流の海のぎんいろに

黒潮に黝き俊寛僧都跳ぶ

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「ダンスホール瀧」(2006)
→現代俳句新人賞応募作品(落選)

まなうらに金狐銀虎や入梅す

淫祠あり猛暑の肉に肉を貼る

夏痩せて象の忌々しき睫かな

左右確認して向日葵を打ち倒す

天道虫漁船についてゆきにけり

向日葵や大銀行の二階建て

敗将の恋も戦記に明易し

戦争と氷に詰めし羽音かな

押入れを出て西日の兵となる

心臓に釘はせまりて大西日

をみなその肩幅の海運び来る

海の日の砂場に置かれ野球盤

真夜中の百合の見てゐる全方位

嫂を兄が抱きとめ日傘かな

海芋の束押しつけられし誕生日

かなしいからはずしてといふサングラス

くちづけて妻だけが聞く大雷雨

冷房や塩となりゆく君の街

ダンスホール瀧の姿のまま錆びて

星祭この世の草を越えてゆく

コンパスの先端といふ月夜かな

動物の好きな星飛ぶ古戦場

色鳥の南大門を潜りけり

重陽の筆や肉付きたつぷりと

昼月といふは未来の弦楽器

月の河とも万年筆のペン先とも

国家てふ箱に納まる薄原

継ぎ目なき世界を思ふ秋の潮

十六夜の心臓熱く立ち泳ぎ

総崩れの寺引いてゆく花野かな

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「ほとんど鉄」(2006)
→「俳句研究賞2006」応募作品(落選)

新緑の中や世界を産む羽音

南風にまかせつきりの連歌かな

麦の秋無数の瑕の管楽器

戦争のなかの畠に麦熟す

銃口黙しつゝ駅前の花水木

空豆のあらゆる経緯くすりゆび

夏芝居火山の如く吉右衛門

京劇の牡丹のやうな女形

卯の花腐し演芸雑誌黄変す

なんとなく添ひ寝の夏の月に触れ

日が落ちて原稿用紙となるあやめ

緑陰にあらゆる色のけもの裂く

緑陰に大皿の縁波立ちぬ

青嵐柱時計のなかの自死

紫陽花やピアノ脚より腐りゆく

梅雨の闇穴を割つたら溝となる

梅雨晴れの富士くつきりと死亡事故

駅といふほとんど鉄が緑雨の中

珈琲店緑雨と書けば降りにけり

青梅雨の家にいくつの蝶番

休日をほとんど埋める梅雨の音

金属の筒整列す梅雨の歌劇

梅雨の駅詩人斃るを誰も見ず

くちなはがアダム・スミスの骸より

わが映るくちなはを断つ刃かも

弦楽にしのび込む蛇欠伸して

くちなはを厠へ誘ふ腰である

夏服を脱がせば闇の立つてをり

夏服のなかに蕪村を飼つてゐる

五月雨に孤心を洗ふ鬼もがな

黒南風の砂鉄を含む重さかな

水のうら水のおもてや明易し

いつまでも夏帯を解く受話器かな

黴のなかの鏡の中の納戸かな

有頭海老よ驟雨のなかの船団よ

兵力を白雨のなかに数へつゝ

まぼろしの富士沈みゆく白雨かな

やがて死ぬ青水無月の脚と腹

パラソルのをみな笑顔にして深傷

夏の河越す石鹸のにほひかな

麦酒といふ不思議な海を冷却す

虎の屁に峰雲集ふ途中なり

雲の峰天地わかれて蹴球あり

儒教てふ大向日葵を切り倒す

火口へと夏草なにも考へず

虹を見て子猫の不運きわまれり

歩くなりプールの水に縛られて

蘭鋳に速度ひとつやソフトウェア

湯の中の西日揺れをり揺られをり

鳥帰る東京液化そして気化

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「日と月に」(2006)
→「豈」42号

日と月にわれてあはぬよ枯木山

歌積んで山河を成せと偽勅かな

藍甕のほとり騎乗し恋愛し

迷路ごと呑みこむ牛や秋彼岸

絶望の城のごとくに暖炉かな

皇帝のやうな禿頭にこそ雹

ヌーヴェルヴァーグ扉に蝶の貼られゐて

粉末の花を求めてクリスマス

大寒の鏡より出て鏡を拭く

大年の茶碗に残る茶の地形

元旦の龍虎を隠す黒雲よ

数千の書みな背を向け初日かな

歌留多撒く東洋一の鉄塔より

文机にひとかたまりの歌留多かな

街娼を独逸の城のやうにかな

冬天の北イタリアへ紐の王

子宮からつづく坂道春は昼

祝婚や亜鉛の翼畳まずに

万華鏡に詰めて胡桃と太陽と

名月やむかしの猫を膝の上

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「管絃法」(2005)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

立春の産毛に触れて肌に触れず

夜桜の奥へペルシアの水煙管

関東を傾けて咲く林檎かな

アルファベットを重ねる祈り妻の留守

筍を掘りあてるたび神寂びて

塵の世と濁世まじわる土用干し

わたくしの懈怠をすくひとる芙蓉

逢瀬とはぽんぽんだりや海を吐く

人妻へ焦土のごときサングラス

千手観音あるいはサルビアの真紅

夕立のあとの鏡に脂かな

牛の耳はばたきやまずにれがむとき

南風はホルスタインの鬱の眼に

冷房や習作の花ひび割れて

泣きさうな裸婦をめとりぬ鳳仙花

風景のほとりの水の昏さかな

細密な文字の狐の嫁入りなり

盂蘭盆や餡の暗黒ごつたがへす

戸袋の内なる闇と貿易と

飛行機の散らかつてゐる暑さかな

八月や雲傲然と風に乗る

頂点で崩るる波の管絃法

からつぽの電車の中を野分かな

阿修羅暴れて蜂蜜をかき混ぜる

夏痩せて狩衣の透きとほるなり

てのひらに載るにがうりや噴火して

国境濡らすレーズンの暗さもて

藍甕のほとり騎乗し恋愛し

透き通る蝉の翅かな占星の

双発機の行方を知らず床暖房

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「記念日俳句十二月」(2005)

12.1:映画の日
映画の日陶器のやうな京マチ子

12.2:日本人宇宙飛行記念日
日本人宇宙飛行記念日喇叭の奥の部屋

12.3:妻の日
妻の日や楽器の裏が燃えてゐる

12.4:E・Tの日
E・Tの日やブレーキがこはされて

12.5:モーツァルト忌
モーツァルト忌生まれついての大伽藍

12.6:姉の日
姉の日の衣冠をとれば裸身なり

12.7:ラグビー国際試合記念日
ラグビー国際試合記念日五色の沼

12.8:太平洋戦争開戦記念日
文箱冠水す太平洋戦争開戦記念日

12.9:障害者の日
星型の庭に障害者の日の獅子

12.10:アロエヨーグルトの日
壜詰めの詞華集アロエヨーグルトの日

12.11:胃腸の日
海底をこんなに歩く胃腸の日

12.12:漢字の日
粍(ミリメートル)糎(センチメートル)漢字の日

12.13:正月事始め・煤払いの日
正月事始め・煤払いの日の胎内
12.14:南極の日
南極の日ステンドグラスの草色を
12.15:観光バス記念日
東塔から西塔まで観光バス記念日
12.16:電話創業の日
電話創業の日交換といふ水芸
12.17:ライト兄弟の日
ライト兄弟の日天使めく漫才師
12.18:国連加盟記念日
国連加盟記念日死者の住む国も

12.19:日本初飛行の日
明鏡止水在り日本初飛行の日

12.20:ブリの日
ブリの日の踏み台昇降運動など

12.21:回文の日
回文の日鶏頭に溶岩(ラバ)薔薇に棘

12.22:酒風呂の日
酒風呂の日は群青の山ばかり

12.23:天皇誕生日
森ぢゆうに天皇誕生日の夜露

12.24:クリスマスイブ
クリスマスイブ色町に青い底

12.25:クリスマス
粉末の花を求めてクリスマス

12.26:プロ野球誕生の日
プロ野球誕生の日の擦りガラス

12.27:ピーターパンの日
ピーターパンの日セロファンの仮面です

12.28:ディスクジョッキーの日
ディスクジョッキーの日の四隅に裸武者

12.29:清水トンネル貫通記念日
清水トンネル貫通記念日幽霊坂

12.30:地下鉄記念日
地下鉄記念日湧きあがる濃厚牛乳

12.31:ニューイヤーズイブ
ニューイヤーズイブやはるばる資治通鑑

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「記念日俳句十一月」(2005)

11.1:紅茶の日
子に累を及ぼす罪と紅茶の日

11.2:タイガース記念日
タイガース記念日映画を光源に

11.3:アロマの日
アロマの日シネマの奥の綱渡り

11.4:ユネスコ憲章記念日
ユネスコ憲章記念日のパリの馬

11.5:いい5世代家族の日
いい5世代家族の日の暗黒舞踏

11.6:お見合い記念日
お見合い記念日の嫌われたパンダたち

11.7:鍋の日
鍋の日のペテルブルクは煮え立ちぬ

11.8:八ヶ岳の日
八ヶ岳の日凩の帰宅かな

11.9:換気の日
ハモニカの捨てられてをり換気の日

11.10:ハンドクリームの日
ハンドクリームの日清潔なピリオドを

11.11:サッカーの日
サッカーの日や底なしの頭陀袋

11.12:洋服記念日
洋服記念日アルミのウエディングドレスを

11.13:うるしの日
うるしの日長靴さへも許せない

11.14:いい石の日
いい石の日の中世の都市の殻

11.15:蔵の日
蔵の日や全山の音漏らさずに

11.16:幼稚園記念日
幼稚園記念日涙の窓がある

11.17:将棋の日
花束をつくる機械や将棋の日

11.18:土木の日
砂場てふ陰をあらはに土木の日

11.19:鉄道電化の日
鉄道電化の日や浅草は神谷バー

11.20:ピザの日
切り分けるといふ生き方ピザの日も

11.21:早慶戦の日
早慶戦の日ふはりと提灯行列に

11.22:回転寿司記念日
金皿にミニカー回転寿司記念日

11.23:外食の日
外食の日積木の家に鳩時計

11.24:鰹節の日
鰹節の日運慶よりは快慶

11.25:OLの日
OLの日やなりゆきで人と棲む

11.26:ペンの日
ペンの日や指そのものも記憶して

11.27:ノーベル賞制定記念日
ノーベル賞制定記念日の磐船

11.28:太平洋記念日
太平洋記念日黒船の鱗粉

11.29:議会開設記念日
議会開設記念日羊が絨毯に

11.30:シルバーラブの日
シルバーラブの日ゴールドをあくまでも

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「記念日俳句十月」(2005)

10.1:めがねの日
めがねの日大仏殿を掃きに掃く

10.2:豆腐の日
豆腐の日恋も季物も水に浮く

10.3:登山の日
登山の日マッチ一本秘事のもと

10.4:104の日
沖縄の104の日の乳頭

10.5:レモンの日
レモンの日強き緑のあらまほしく

10.6:国際ボランティア貯金の日
ベラ・バルトークが国際ボランティア貯金の日

10.7:ミステリー記念日
ミステリー記念日床の西日踏む

10.8:木の日
「木の日とは……」の後を音羽の鳩、檜

10.9:世界郵便デー
世界郵便デーのいづこも星の殻

10.10:空を見る日
空を見る日や電球を胸に抱き

10.11:リンゴの唄の日
リンゴの唄の日を竹やぶで生きのびる

10.12:コロンブスデー
コロンブスデーはじめてのジャワカレー

10.13:さつまいもの日
さつまいもの日エンジンを運ぶ駄馬

10.14:鉄道の日
鉄道の日シンセサイザーの不整脈

10.15:たすけあいの日
たすけあいの日移民棄民の肩に鳥

10.16:まごの日
まごの日の闇を拡げてゐる手指

10.17:カラオケ文化の日
瀧のやうにマラカスカラオケ文化の日

10.18:冷凍食品の日
冷凍食品の日のレンジといふ球体

10.19:土井晩翠忌
することもなき午後の土井晩翠忌

10.20:新聞広告の日
新聞広告の日のファラオと鷹の爪

10.21:あかりの日
内臓を雨に濡らしてあかりの日

10.22:パラシュート記念日
歩めば風に巻かれてパラシュート記念日

10.23:もめんの日
もめんの日木綿以前の日々かなし

10.24:文鳥の日
文鳥の日や八角の文机を

10.25:民間航空記念日
民間航空記念日曇ときどき姉

10.26:柿の日
石室に隠れて柿の日の暮るる

10.27:テディベアーズデー テディベアーズデー花札に大統領

10.28:日本のABCデー
歌へ日本のABCデー「E気持ち」

10.29:ホームビデオ記念日
ホームビデオ記念日は三倍モードの夜

10.30:初恋の日
初恋の日や理科室の闇育つ

10.31:ガス記念日
縄文土器を炎が支へガス記念日  中村安伸

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「記念日俳句九月」(2005)

9.1:マテ茶の日
人影の濃くなつてゆくマテ茶の日

9.2:宝くじの日
宝くじの日それから宝くじの夜

9.3:ベッドの日
ベッドの日トランポリンの日にあらず

9.4:くしの日
くしの日やもういくつ寝ると神無月

9.5:石炭の日
石炭の日地図では広い北の島

9.6:妹の日
妹の日ひねもすラヴェル作ボレロ

9.7:クリーナーの日
クリーナーの日の秋風を吸ふて出す

9.8:平和条約調印記念日
平和条約調印記念日篭目かごめ

9.9:救急の日
救急の日ジョンとポールのひかりごけ

9.10:屋外広告の日
屋外広告の日の三角柱と球

9.11:公衆電話の日
新聞にミルクを注ぐ公衆電話の日

9.12:宇宙の日
Projectを計画と呼ぶ宇宙の日

9.13:世界の法の日
世界の法の日太陽はいつも無罪

9.14:メンズバレンタインデー
メンズバレンタインデー旭将軍起つ

9.15:ヒジキの日
ヒジキの日銘々皿は夜を抱く

9.16:マッチの日
祖国よりいまも噴煙マッチの日

9.17:モノレール開業記念日
モノレール開業記念日への階段

9.18:かいわれ大根の日
かいわれ大根の日伸びきつたタイミング

9.19:苗字の日
苗字の日その裏側でママレモン

9.20:バスの日
バスの日や濡れたる傘とともに寝て

9.21:ファッションショーメモリアルデー
ファッションショーメモリアルデーの塩加減

9.22:日本救世軍創立記念日
日本救世軍創立記念日素焼の猿

9.23:不動産の日
不動産の日ヒトのみが所有して

9.24:歯科技工士記念日
歯科技工士記念日機械室乾く

9.25:藤ノ木古墳記念日
藤ノ木古墳記念日水となる天子

9.26:ワープロ記念日
ワープロ記念日すばらしいYMCA

9.27:女性ドライバーの日
女性ドライバーの日をにぎりしめる

9.28:パソコン記念日
パソコン記念日土佐の高知はロックシティ

9.29:招き猫の日
招き猫の日のそらいろに招かれ

9.30:くるみの日
くるみの日地水火風を酷使して

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「記念日俳句八月」(2005)

8.1:水の日
水の日の水を吸ひこむお尻かな

8.2:金銀の日
金銀の日さまよふ平将門たち
8.3:ハモの日
ハモの日の背中の裂けてゐるドレス

8.4:橋の日
扇子より橋の日の蟻こぼれ落つ

8.5:タクシーの日
タクシーの日内ポケットへ帰宅せり

8.6:広島原爆忌
広島原爆忌何といふ祝婚歌

8.7:バナナの日
バナナの日バナナの皮といふ戦前

8.8:そろばんの日
屋上遊園地そろばんの日に誰も居ない

8.9:パークの日
銃弾の雨にからかさパークの日

8.10:宿の日
宿の日やどこへ行つても庭に松

8.11:ガンバレの日
日に灼けてガンバレの日のすべり台

8.12:太平洋横断記念日
両断にあらず太平洋横断記念日

8.13:函館・夜景の日
函館・夜景の日や花嫁の鞍を置く

8.14:専売特許の日
むかしあるところに専売特許の日

8.15:終戦記念日
終戦記念日ラジオの中は闇と波

8.16:プレスリー忌
ドラムスに百本の捩子プレスリー忌

8.17:プラチナ・パートナーの日
プラチナパートナーの日骨董ジャンボリー

8.18:高校野球記念日
高校野球記念日丈夫なチアガール

8.19:バイクの日
重心の移動せはしくバイクの日

8.20:交通信号の日
交通信号の日コーヒーに黒砂糖

8.21:献血の日
献血の日なり墨汁をたつぷりと

8.22:向田邦子忌
向田邦子忌屏風絵の馬跳ねる

8.23:一遍忌
一遍忌かなしみを撒くミラーボール

8.24:大噴火の日
大噴火の日畳の上でつながつて

8.25:サマークリスマス
南半球のつもりでサマークリスマス

8.26:ナミビアの日
原始人清子が来たぞナミビアの日

8.27:「男はつらいよ」の日
教壇にマドンナ「男はつらいよ」の日

8.28:民放テレビスタートの日
民放テレビスタートの日だヨ!全員集合

8.29:焼き肉の日
焼き肉の日のフェラーリへ水を打つ

8.30:ハッピーサンシャインデー
ハッピーサンシャインデー徹夜で宿題だ
8.31:野菜の日
女性専用車には乗れない野菜の日

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「記念日俳句七月」(2005)

7.1:童謡の日
童謡の日や棒に振るものもなく

7.2:うどんの日
門兵衛の頭の上にうどんの日

7.3:波の日
波の日の火をふりまはす辻芸人

7.4:梨の日
梨の日の古い親戚ありがたし

7.5:ビキニスタイルの日
ビキニスタイルの日の紋付袴かな

7.6:サラダ記念日
アリババとサラダ記念日の盗賊たち

7.7:ポニーテールの日
ポニーテールの日やガラス張りの浴室に

7.8:那覇の日
那覇の日や果実は顔に奇を尽くす

7.9:ジェットコースター記念日
別々に帰つたジェットコースター記念日

7.10:納豆の日
見えずとも納豆の日の万有引力

7.11:真珠記念日
真珠記念日冠婚葬祭に骨組

7.12:洋食器の日
洋食器の日テーブルいつぱいの兵器よ

7.13:ナイスの日
昨日のことのやうにナイスの日

7.14:ゼリーの日
ゼリーの日店長だけちがふ柄

7.15:中元
風呂敷にギターを包むお中元

7.16:駅弁記念日
ますのすしのやうな月出て駅弁記念日

7.17:漫画の日
狩衣の塵となりたる漫画の日

7.18:海の日
ドビュッシーとは海の日の洗顔フォーム

7.19:北壁の日
北壁の日のゆるぎないたなごころ

7.20:ハンバーガーの日
ハンバーガーの日宇宙戦艦に黒猫

7.21:神前結婚記念日
神前結婚記念日といふ縹色

7.22:げたの日
げたの日や天下を狙ふ藍浴衣

7.23:天ぷらの日
天ぷらの日や骨盤の地図を読む

7.24:劇画の日
長髪の男芸者よ劇画の日

7.25:かき氷の日
かき氷の日村中狸寝入りかな

7.26:ポツダム宣言記念日
ポツダム宣言記念日セルロイドの達磨

7.27:スイカの日
スイカの日人魚に帯を買ふてやる

7.28:菜っ葉の日
ぬらぬらとてぬぐひ染まる菜っ葉の日

7.29:アマチュア無線の日
少年出獄したるアマチュア無線の日

7.30:プロレス記念日
プロレス記念日水揚げに体操着

7.31パラグライダー記念日
パラグライダー記念日の柳腰

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「記念日俳句六月」(2005)

6.1:麦茶の日
傷口が無茶なこと言ふ麦茶の日

6.2:路地の日
路地の日の穢土を離るる夜汽車かな

6.3:ムーミンの日
銀座二丁目ムーミンの日のひとり芝居

6.4:虫歯予防デー
虫歯予防デー国生みの中華鍋

6.5:世界環境デー
世界環境デー真空管掴み取り

6.6:かえるの日
かえるの日ひとりにひとつ頭陀袋

6.7:母親大会記念日
母親大会記念日鳥辺山のカラス

6.8:成層圏発見の日
成層圏発見の日塗装工の涙

6.9:ロックの日
新宿を出で入る猫やロックの日

6.10:時の記念日
時の記念日二本の草を千本に

6.11:梅酒の日
梅酒の日泳いでも泳いでも割烹着
6.12:恋人の日
恋人の日や釉薬を吸ふ粘土

6.13:鉄人の日
鉄人の日やぼろぼろの湯帷子

6.14:映倫発足の日
映倫発足の日や羽織の裏までも

6.15:千葉県民の日
習志野は月の彼方に千葉県民の日

6.16:麦とろの日
副校長麦とろの日の無為無策

6.17:おまわりさんの日
おまわりさんの日L字になりきれぬ拳銃

6.18:おにぎりの日
和平でも抗戦でもなくおにぎりの日

6.19:朗読の日
朗読の日お弁当箱のなかにいます

6.20:ペパーミントの日
炭火よく熾りてペパーミントの日

6.21:冷蔵庫の日
冷蔵庫の日産めよ殖やせよ殺せよと

6.22:ボウリングの日
ボウリングの日や針のやうに棒のやうに

6.23:オリンピックデー
オリンピックデーをとびたつ金の鳩

6.24:空飛ぶ円盤記念日
空飛ぶ円盤記念日空飛ぶ新仲見世

6.25:住宅デー
応仁の乱後の恋や住宅デー

6.26:露天風呂の日
露天風呂の日腿といふ桟橋に

6.27:ちらし寿司の日
ちらし寿司の日ピンクとブルーのケイオス

6.28:貿易記念日
貿易記念日水際に犬並ぶ

6.29:ビートルズ記念日
ビートルズ記念日吉原仲之町

6.30:アインシュタイン記念日
アインシュタイン記念日神より速い妻

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「記念日俳句五月」(2005)

5.1:スズランの日
大聖堂スズランの日の水を撒く

5.2:緑茶の日
水上バスのやうに寝そべり緑茶の日

5.3:憲法記念日
憲法記念日両翼に積もる砂

5.4:ラムネの日
祝ふとは泡立つことかラムネの日

5.5:こどもの日
弁慶の扮装で来るこどもの日

5.6:ゴムの日
ゴムの日の三千世界もどかしく

5.7:コナモンの日
コナモンの日の松竹座やや焦げて

5.8:童画の日
真つ黒な渦が太陽童画の日

5.9:黒板の日
青チョーク突如崩れて黒板の日

5.10:コットンの日
コットンの日ここからどこまでが水流

5.11:長良川鵜飼い開きの日
長良川鵜飼い開きの日の国境

5.12:看護の日
ネクタイをして湯に入る看護の日

5.13:メイストームデー
メイストームデーがわたしの誕生日

5.14:温度計の日
温度計の日魚籃観音の背泳ぎ

5.15:青春七五三
飴色のつばさ青春七五三

5.16:旅の日
旅の日や下呂温泉に忘れ物

5.17:生命・きずなの日
生命・きずなの日なりレンジの回り舞台

5.18:ことばの日
火のついた柱を見つめことばの日

5.19:ボクシング記念日
ボクシング記念日隠喩としてのロケットパンチ

5.20:ローマ字の日
あまのはらふりさけみればローマ字の日

5.21:リンドバーグ翼の日
走りだしたら毎日がリンドバーグ翼の日

5.22:ガールスカウトの日
ガールスカウトの日尼御前に補導歴

5.23:ラブ・レターの日
ラブ・レターの日を歩きだす内親王

5.24:ゴルフ場記念日
ゴルフ場記念日卵あまつてます

5.25:広辞苑記念日
広辞苑記念日月の出ぬ草叢

5.26:東名高速道路全通記念日
東名高速道路全通記念日たわむ

5.27:百人一首の日
人知れずこそ百人一首の日の綾取り

5.28:ゴルフ記念日
ゴルフ記念日少女に飛距離備わつて

5.29:こんにゃくの日
こんにゃくの日の病巣がかがやいて

5.30:お掃除の日
お掃除の日や足指を舐めさせる

5.31:世界禁煙デー
世界禁煙デー意志弱きものは去れ

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「記念日俳句四月」(2005)

4.1:トレーニングの日
トレーニングの日腹いっぱいの水蒸気

4.2:歯列矯正の日
酸つぱい笑顔で歯列矯正の日来る

4.3:いんげん豆の日
いんげん豆の日峠の茶屋の小火

4.4:あんぱんの日
あんぱんの日妻想ふこと五里霧中

4.5:デビューの日
某城主老中何某デビューの日

4.6:しろの日
しろの日やむかし姫川図書之助

4.7:世界保健デー
群青ばかりの世界保健デー暮るる

4.8:タイヤの日
タイヤの日輦車に乗りて唐までも

4.9:大仏の日
大仏の日の壇ノ浦真つ赤つ赤

4.10:建具の日
青空にコートを吊つて建具の日

4.11:ガッツポーズの日
ガッツポーズの日なり木箱の中にビル

4.12:パンの記念日
パンの記念日なにもかも焼きたてに

4.13:恵美子の日
沓手鳥孤城落月恵美子の日

4.14:オレンジデー
オレンジデーそもそも穴の違ふ婚

4.15:ヘリコプターの日
ヘリコプターの日やから駱駝に乗つて行こ

4.16:ヴィラデスト・田園記念日
ヴィラデスト・田園記念日のヴィオラ

4.17:なすび記念日
なすび記念日深紫の十二気筒

4.18:発明の日
発明の日の竹林に七、八賢

4.19:地図の日
地図の日の草に朽ちたるボートかな

4.20:郵政記念日
郵政記念日韋駄天は雲を履く

4.21:民放の日
民放の日そこここに黒い箱

4.22:地球の日
神様の投球フォーム地球の日

4.23:サン・ジョルディの日
サン・ジョルディの日焚書と喚ぶ女かな

4.24:植物学の日
植物学の日鉢植えの系統樹

4.25:国連記念日
国連記念日の不機嫌な摩天楼

4.26:七人の侍の日
七人の侍の日の御休憩

4.27:悪妻の日
悪妻の日の蝶貝は無効票

4.28:庭の日
庭の日のおやすみを言ふ躙口

4.29:エメラルドの日
エメラルドの日爆音に蛇からむ

4.30:図書館記念日
図書館記念日私が眠る閉架書庫

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「記念日俳句三月」(2005)

3.1:ビキニデー
捨印をどこへでも捺すビキニデー

3.2:ミニの日
ミニの日や子孫おろかに繁栄す

3.3:結納の日
結納の日柱は闇に溶けはじむ

3.4:ミシンの日
ミシンの日縫ひ目のごとく転生す

3.5:サンゴの日
サンゴの日ふるへるものをふところに

3.6:世界一周記念日
世界一周記念日夜目にわが背中

3.7:消防記念日
消防記念日祖母に似てゐるガスマスク

3.8:みやげの日
みやげの日手品で消える竹生島

3.9:佐久の日ケーキ記念日
佐久の日ケーキ記念日BachとCouperin

3.10:ミントの日
一生の恋は滅びてミントの日

3.11:パンダ発見の日
パンダ発見の日や無知てふこと愉し

3.12:サンデーホリデーの日
サンデーホリデーの日を呪へり康珍化

3.13:青函トンネル開業の日
青函トンネル開業の日やマスク干す

3.14:ホワイトデー
をみならへホワイトデーの修正液

3.15:靴の記念日
靴の記念日いちまいの沼を剥ぐ

3.16:十六団子
十六団子ひとつ翼を得たらしく

3.17:セントパトリックデー
セントパトリックデーはロシアの草を踏む

3.18:精霊の日
精霊の日天動説の杉を伐る

3.19:ミュージックの日
ミュージックの日Frank Zappaが蹂躙す
3.20:上野動物園開園記念日
上野動物園開園記念日矛ふるふ

3.21:ランドセルの日
ランドセルの日祖母亡く祖父は長寿なり

3.22:放送記念日
放送記念日かくれて笑ふ愛宕山

3.23:世界気象デー
世界気象デー床の間に火柱を

3.24:ホスピタリティデー
ホスピタリティデーの雪女の死骸

3.25:電気記念日
電気記念日佐久間象山白馬駆る

3.26:楽聖忌
楽聖忌友よさらなる叢雲を

3.27:さくらの日
花人を掃いて捨てたきさくらの日

3.28:スリーマイル島記念日
スリーマイル島記念日の石棺に罅

3.29:マリモ記念日
マリモ記念日バレリーナ潤沢に

3.30:国立競技場落成記念日
国立競技場落成記念日武者二騎過ぐ

3.31:年度末
年度末けふぞ憂憤晴るるかも

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「記念日俳句二月」(2005)

2.1:ニオイの日
ニオイの日庫裏に供物の朽ちはじむ

2.2:夫婦の日
念入りに牛乳を塗る夫婦の日

2.3:のり巻きの日
のり巻きの日の吉例に花電車

2.4:ぷよの日
ぷよの日やたつぷり水を飲み干して

2.5:笑顔の日
Jean-Luc Godard空に笑顔の日

2.6:海苔の日
海苔の日の黒髪を敷く伊良虞島

2.7:北方領土の日
臓腑のやうな港北方領土の日

2.8:〒マークの日
風の缶届く〒マークの日

2.9:フットクリームの日
フットクリームの日の踊り子よく伸びる

2.10:キタノ記念日
キタノ記念日沼よりぬつと金の斧

2.11:建国記念の日
建国記念の日の土蜘蛛の血筋かな

2.12:ペニシリン記念日
ペニシリン記念日巨石文明古り

2.13:苗字制定記念日
闇に蹴りあふ苗字制定記念日の

2.14:バレンタインデー
くさむらにほふバレンタインデーの指

2.15:春一番名づけの日
春一番名づけの日とや増鏡

2.16:天気図記念日
天気図記念日七色の虹を刷る

2.17:天使のささやきの日
天使のささやきの日といふのに抱き合へぬ

2.18:嫌煙運動の日
嫌煙運動の日をぶらぶらする殺意

2.19:天地の日
生前の愛に用なし天地の日

2.20:歌舞伎の日
女は殺し書物は犯す歌舞伎の日

2.21:日刊新聞創刊の日
日刊新聞創刊の日のXenakis

2.22:ヘッドホンの日
ヘッドホンの日ゆらゆら吉野熊野かな

2.23:富士山の日
富士山の日の白妙のもののふよ

2.24:月光仮面登場の日
甲冑つけて月光仮面登場の日

2.25:夕刊フジ創刊記念日
夕刊フジ創刊記念日の流刑

2.26:二・二六事件の日
新橋演舞場二・二六事件の日

2.27:絆の日
切れてなほきらきらとあり絆の日

2.28:エッセイ記念日
エッセイ記念日フルーツに毒すこし

2.29:富士急の日
富士急の日の着ぐるみは人を容れ

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「記念日俳句一月」(2005)

1.1:元日
みづうみに海を投げ込むお元日

1.2:初夢の日
初夢の日の夕霧と伊左衛門

1.3:ひとみの日
遠(をち)と近(こち)触れあつてゐるひとみの日

1.4:石の日
石の日のをみならカフェに蝟集せり

1.5:いちごの日
軽音楽部山を越えつゝいちごの日

1.6:佐久鯉誕生の日
壁に佐久鯉誕生の日の水彩画

1.7:ツメ切りの日
ツメ切りの日詰めの甘さを舐めてゐる

1.8:平成スタートの日
平成スタートの日の黒縁眼鏡かな

1.9:とんちの日
玉茎の萌ゆるにまかせとんちの日

1.10:110番の日
110番の日とふと思ふ不眠症

1.11:めんの日
めんの日の四方平らにアヴェマリア

1.12:スキー記念日
スキー記念日an americanを捕獲せり

1.13.ピース記念日
ピース記念日五臓六腑をあけひろげ

1.14:愛と希望と勇気の日
アフロヘアーと愛と希望と勇気の日

1.15:半襟の日
荒れてゐる半襟の日の厳島

1.16:囲炉裏の日
囲炉裏の日恵方に民俗資料館

1.17:おむすびの日
土方歳三おむすびの日の憤怒

1.18:都バス記念日
都バス記念日われこそ全身広告塔

1.19:のど自慢の日
のど自慢の日砂の女と時計の女

1.20:海外団体旅行の日
海外団体旅行の日々を鳥葬に

1.21:ライバルの日
高杉と久坂とわれとライバルの日

1.22:飛行船の日
飛行船の日は暮れなづむ窮理学

1.23:ワンツースリーの日
ワンツースリーの日月火水木金土

1.24:法律扶助の日
法律扶助の日限定粉ミルクまんぢゆう

1.25:中華まんの日
中華まんの日自転車通学のロックバンド

1.26:文化財防火デー
笑顔が八百屋お七で文化財防火デー

1.27:国旗制定記念日
海軍蝦夷へ国旗制定記念日の

1.28:コピーライターの日
太刀提げてコピーライターの日である

1.29:タウン情報の日
タウン情報の日はみんなで色街へ

1.30:みその日
みその日の越中富山産妖婦

1.31:防災農地の日
防災農地の日なり種蒔き三番叟

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「天地開闢」(2005)
→「豈」41号

如月の縞を掴めば渦となり

髪型といふ山脈を馬で越す

カーテンを掴む寒夜の仁王像

猫ふたつ銀座に余る時雨かな

盆の梅枝のかたちに闇の凝り

竹生島けぶりて消へぬ懐手

中世や兎に騎りて渡る湖

繭玉に昼が来てをりミサイルも

水圧の高まつてゆく八重桜

生活のない花束を木曾殿に

眷属の集まり散ず夕牡丹

薫風を髪に巻きつけ正装す

四月尽聖書に卵産みつけて

貼り交ぜの緑の中を旅立ちぬ

牡丹花の奥の微細な河川かな

牡丹てふ軽き洪水いろはうた

ぼうたんや印度独逸のあと津軽

青山河この裾除けは揚羽蝶

風薫る馬に乗つたりあるいたり

天地開闢光のやうな水が来て

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「行軍録」(2005)
→「豈」40号

姥捨のメイプルリーフ降りやまず

天に尻向けて焦土のぬひぐるみ

降る雪の映画の中を行軍す

四つ折の月を揚げたり神楽坂

全山の紅葉のごとく人斬らる

王陽明鯨酔の段そぞろ寒

菊枕古語が錆びつく左腕

飴色の満月に蟲湧きをらむ

谷折を谷の字にして秋終わる

びつしりと光の箱を水際まで

長の陸軍進む遊女のあしのうら

聖夜劇曽我五郎といふ重石

神武東征ひたすら椅子を切り刻む

積み上げて皿まつ白な重さかな

沐浴の千手観音蝶太る

供物として冬田へ放つ背美鯨

火まつりの斧(よき)を演じる野田秀樹

冬の海ただ裃が燃えてゐる

大つごもりの仏とも朽木とも

みな王に触れてからゆく冬至かな

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「南蛮図」(2004)
→「豈」39-2号

白南風の切先迫る南蛮図

風をひもとけば八代将軍なり

えれきてる汐目に沿うて切開す

還俗の途端驟雨や此花区

あにいもと瀧を溶接してしまふ

神前をゼロが蝕む桑の昼

藤棚や自給自足を手短に

煬帝を招く細身の管楽器

鷺放つ竜宮宛の文をつけ

奈良漬の店の奥処は痒きかな

陰陽の澱溜まりゆく秋の水

海老反りの姫や四国が腹の上

神君の下知は乳より滴れり

すみやかに青汁を積む朱印船

夏安居天帝の膿大切に

編みかけの籐椅子転ぶ日雷

肉体めぐるネクタイの行進曲

眠るのは受話器の仕事花菜畑

古びたる水中花名はシェヘラザード

秋の昼ヴァイオリンとは一人の森

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「鏡の間」(2004)
→「豈」39号

藤の花ほどけば不等式である

弁慶立往生の頃より健胃薬

この塩の柱は叔母と薄明に

春雷や螺子の頭もまた寺院

階段が捨てられてゐる大西日

どの鉢も海水を容れ額の花

蓬髪にからまつてゐる懸想文

上善如水肩から腕へ鳥渡る

天よりも高きところを柏餅

太閤のふところの虎風薫る

羽音させぬやうにソプラノ登場す

桐壺に桐咲くむかし神智学

普陀洛や花の余剰のながれゆく

手風琴提げ腸(はらわた)の森を行く

白牡丹二つに裂かれ薪能

海ゆかば膿噴くからだ鏡の間

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「資生堂」(2003)
→「豈」38号

花野てふ鬼の褥や資生堂

修羅の首落つれば生えて花の雲

桓武帝以前稲妻めく房事

全山の桜を背負ふ古狐

月天心泡の中なる伎芸天

紅葉山置きかねてをり大連(おおむらじ)

東塔を少し包みて福助足袋

凩やロオマに煮られゐる心臓

聖受胎マンガは薔薇のインフレエシヨン

積み上げて漸く鉄の臭ふなり

夜行性国家右眼を閉ざす冬

西日よく吸ふて埴輪の多孔質

秋冷や無為に点呼を待つ和菓子

遠足に無音無臭の鳩光る

関の扉に触れたる指も桜鯛

海牛の鏡をすべりゆく夜長

綺羅と湯の沸く瞬間や鳥渡る

陽は市にあふれて我等ロバの裔

妹(いも)冷ゆる音して紅葉日和かな

伊藤月子の馬になりたし十一月

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「手紙は箱に」(2003)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

葛の花われを螺旋へ導きぬ

牛の読む牛の聖書の二行ほど

霊は肉をさがす旅路や仏手柑

火の叢を愁の河を越す夏蝶

畜生の眼に殺しあう琴と雪

青年の林檎剥く手が止利仏師

天堂の魚は人を焼く夜長

百千鳥われ絶望を更新す

曼珠沙華石の地蔵の目が娼婦

暗黒と東寺をつなぐ蝶番

殺されて青田を囲む案山子かな

鯛困り果てているなり井戸端にて

京劇を観にゆく暗き百合に乗り

御軍を狐の統ぶる星月夜

サンクトペテルブルクの指を待つ胡桃

紫と金の淑気の犯しあう

蟻人に変じて以後の日向水

人を喰ったような月夜とファゴットと

小春日の紐をほどきに来る金鶏

複雑な一人静を折り取りぬ

剃髪とあるきつづけるための帆と

ひとつだけ鼓打たるる猛暑かな

五重塔の眠りは浅し豊旗雲

雪の日の浅草はお菓子のつもり

ゆめもぐらを叱るはうつつもぐらかな

男子は伸縮自在たるべし土用波

恵方へと子をひり出せる浴衣かな

鬼百合に照らされて碁を打ちにけり

椅子ひとつロシアにありて草野球

立秋の手紙は箱に妹(いも)は野に

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「樹海」(2002)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

春風やわれもおみなを待つ厠

スローモーションの雪崩と沙羅双樹

台形の舞台ありけり猫の恋

猿廻しと猿が帰国の花の闇

桜満開球体を理想とす

バス停にバス嵌まりたる夕桜

春満月わが為に花舗あらざるや

円天井に絵師のあしあとあり遅日

道行の途中で春の水を買う

夜桜やわが尽忠の美少年

西行忌色を好むは火を好む

梅雨明けの馬の背中にf字孔

夏空や男声合唱もこもこす

ゆく夏の水は水車を忘れかね

ソナタ形式から逃げ出して流星群

これは綾の鼓の化石草いきれ

夏の河死神は陽を浴びている

落ちてくる揺れている蛍の愉楽

血の雨を明日降らそうか岐阜提灯

永訣や跳ねるばかりに朝の虹

水の秋塔のこのあたりが乳房

屑鉄をあつめはるけき鬼ヶ島

胡弓撫でつづける夜の砂嵐

心臓を抜いてギターのできあがり

人形の姫を梟すや春隣

雪国の底に無数のおぶつだん

繭玉のそれぞれにある緯度経度

三毛猫が冬の港に置いてある

折鶴に機械油が染みて冬

崩々とふくろう愛し合う樹海

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「紅梅白梅」(2002)
→北溟社「俳句界」平成十四年五月号

梅咲いて鋏の音の加速する

人も仏陀もほとんど春の水ならむ

穴を出でながら鋳造される蛇

布のように遅日の坂をあるくかな

銅像も痒くてならぬ花の闇

建国や妻子さくらに充満す

梨の花ワタシ金属見ツケマス

紅梅白梅海の中には仮の海

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「胎風紋」(2001)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

衝動は水であります曼珠沙華

胎風と眼交ぜしており古今集

夜の秋音の隙間をこじ開ける

金属の骨組みを持つ雲の峰

二つ返事という海がある夏休

蓄音や氷に氷つながれる

小鳥来る時おり暗中模索して

八月がぞろぞろと来る大阪府

僧都来てぺろりと花野平らげる

秋風やつんと坂道尖るなり

愛撫され月の砂漠は工事中

飛行機に乗って門火を焚きにゆく

哄笑に金額混じる秋日和

夏野菜めく二の腕をつかまえる

愛のない接吻が降る花火かな

風鈴の音濡れそうに青そうに

頭頂に菊の咲くヒト手をあげて

さわやかや女優の脚に片栗粉

秋の水それはそれはそ立方体

急々如律令と檸檬の雨降りぬ

看板の一文字眠る水の秋

夏雲の愛を容れない伽藍かな

地蔵会のもう苦しまぬ池がある

将門の財布が重し夜の秋

たっぷりと秋の水ある院長室

夏の暮人海戦術のみ残る

胎風を総身に彫られおさな妻

猫と梃子急所をさぐりあう夜長

眼から落つ鱗ぴちぴち貝合せ

九月長雨あめりかの蝶番

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「戸締り」(2000〜2001)
→角川書店「俳句」平成十三年一月号より

冬枯れを行けども行けども合衆国

小春日の鍵舐めている女形

初曽我や冷却水は漏れつつあり

鉄道と知らず棲みつく嫁が君

手足なきラジオの怒り冬三日月

地下駅に雪の列車の停まりたる

冬来る膝の戸締まりきちんとす

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「ガラスの部屋」(2000)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

ガラスの部屋に三十二個の扇風機

河童忌の新聞は桃色に濡れ

木犀やむかしの白いさるぐつわ

桜咲くどこか訂正されながら

透き通るほど満腹の嫁が君

任天堂の歌留多で倒す恋敵

暖房の壁を占めたる魚の絵

家々に卵を蔵す冬銀河

永遠に合鍵を呑む鯉のぼり

たましいをつまみ食いして鳥帰る

新緑にぱちんと嵌まる空調機

旧家には余る腸詰あおあらし

すこしだけ空を動かす蛇苺

オリュンポスの火をやどらせて蟹歩む

花火師が絹目封筒買いにけり

金魚玉ぶるぶる揺らす荒事師

いざ出陣と花氷舐めている

京堀に江戸堀隣る鱧の皮

むかし火矢射掛けられたり夏館

球面の尖る猛暑となりにけり

窓ガラスから夏雲を掬う匙

八月の覇王に真の闇を貼る

水菓子をぬぐう卑弥呼のタオルかな

冬夕焼け実家より沼はみ出しぬ

愛の巣の近景に河豚沈むなり

逃げ水のほとりで肉を買いにけり

地平線の向こうへばかり林檎落つ

月光が降る逃散の鉄の巴里

朧夜の駿馬とは管楽器なり

無月なり後部座席はすでに森

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「蝶番」(2000)
→フーコー「TILL」第7号「俳句魚眼市」より

春の夜のヴォーカリストの蝶番

ポケットのチョコ溶け尼寺(にじ)は再興す

水仙に生まれてみたし能舞台

再生紙ばさりと飛びぬ花粉症

生き変わり死にかわりして春の杭

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「顔見世」(1999)
→フーコー「TILL」第6号「俳句魚眼市」より

金屏にまっさおな湯気たちのぼる

ステンレス製のたまごと寒卵

季のものに生も死もなく椀の中

冬月のあがるや苦き股の汁

顔見世にまま炊くことを見せにけり

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「ダンス・ダンス」(1999)
→フーコー「TILL」第5号「俳句魚眼市」より

ミラーボールとは聖痕をまき散らす

観音の背に鶏頭ダンス・ダンス

注射器へあいまいな血の流れ込む

鶏姦の視界すべてに富士山を

茄子の馬より茄子の血の滴れり

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「菩提」(1999)
→フーコー「TILL」第4号「俳句魚眼市」より

穢土にありて太陽は受精しており

日蝕や系図のどこか短絡す

菩提寺の最も奥の太陽柱

賛美歌競え太陽の思う壷

きときとの太陽は羈旅の途中か

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「軽業」(1999)
→フーコー「TILL」第3号「俳句魚眼市」より

海よりも渇く白磁の計算機

「パチンコ」の文字は血よりも赤きかな

三鬼忌の緑のシャンプーが怖い

吐く息の中にまっしろな金閣

春の日に胸ぎんいろの軽業師

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「香あわせ」(1998〜1999)
→フーコー「TILL」第2号「俳句魚眼市」より

帝國に一翼ありぬ伽羅ありぬ

丁字油の雫を受けて禁書なり

香菜を刻む手つきも死に近し

真夜中の麝香ほのかに医療器具

誰がために香水瓶の乱反射

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「さるのこえ」(1998)
→フーコー「TILL」創刊号「俳句魚眼市」より

猿の声あげて白薔薇ひらくなり

水の秋サドルは処女の尻を載せ

十月の鳥と魚を溶接す

石鹸と罵声とけあう正常位

女教師と教師の声は草の中

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「水いらず」(1998)
→角川書店「俳句」平成十年九月号「十七字の冒険者」より

文机や鶴の汲む水甘からん

白日のもとに白薔薇堅固なり

油撒き散らす扇風機の晩年

トンネルを抜け蘭鋳は海を見る

河馬飼いの娘ら虹を無駄遣い

水の蹄で来ては轢かれるユニコーン

恋に死ぬ祖父であられよ鳳仙花

金魚ねぶたの未来明るし水銀柱

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「恋より梱包」(1998)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

夏雲に猫を産み出す力あり

ダリアの風を追い抜く処女は禿頭

台風は樹上の試着室にあり

法王に薔薇の香りの下半身

炎昼の古池青く美食せり

城近く氷を灯す夜更けかな

冬木の芽こわれて千羽鶴になる

三月の姉の化粧は筆談めく

猫にある仮の骨格春の水

梅雨明けて賢者の石と知らず踏む

夏山と夏野の際に水死体

看護婦の巨体を夏の川流る

逃げ水のにおいはなやか空気銃

海水をつくる機械は緑陰に

月蝕や禁裏に具足殖えはじむ

強盗の臍見えている野分かな

永遠に崩れぬ化粧月涼し

血の色をかためてありぬ夏料理

バンコクに模造の月も揚がるなり

紅葉つみかさなれば手記不時着す

無花果の舌を吸うなり聖耕衣

コスモスに記念切手を貼れとこそ

月の出や傷の癒えつつある音す

鉄線花飛脚にからみつく美脚

自転車に伝わる入道雲の機微

夏雲の尿意あかるし海南島

ソックスを切り刻んでも夏終わる

うすくうすく虹の割れ目に紙の花

馬は夏野を十五ページも走ったか

恋よりも梱包が佳しリラの花

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「大野一雄 頌」(1998)
→Nifty Serve 「俳句フォーラム」 より

寒山と拾得のあわいの薔薇よ

落武者を童女となせる野分かな

あたらしき翁おどれば花野成る

黄の薔薇の一輪愛し一輪踏む

巴里の夜のイエスに薔薇を投げつけよ

紅白の薔薇ゆきかえる壇ノ浦

オオノカズオノミコトを運ぶガレー船

乳房持つ翁も白雪姫の城

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「null・・・り」(1998)
→Nifty Serve 「俳句フォーラム」 より

輝きで基礎から鶴を追い越そう

無花果を魚類と思う開国や

二人を繋いで沈む手錠が売られている

君は鱗を僕は帽子を脱ぐ地下だ

青いジャケット鮫回遊のカレンダー

漏電や蓮の上なるユーラシア

婦警を開放弦とおもえば林檎成る

桔梗の獣爪ここで灰皿を投げねば

生後の鬱は木犀の香るなり

日短や腰より輪廻転生す

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「東京23区」(1997)
→Nifty Serve 旧「詩のフォーラム」 より

足立区の河童のなごりとして時雨

荒川区立唯美的児童公園

ぱりじやんの酒の肴に板橋区

近い星よりも遠くの江戸川区

大田区を洗えば青く色落ちす

葛飾区仔犬小走り夏時間

地吹雪は北区と対になるべきだ

竹の皮鯖の皮ほど江東区

狐火の旅のにもつは品川区

渋谷区はみんなオアシス持ち歩く

寒鯉の頭上はるかな新宿区

杉並区みかんせいじん邸に雪

墨田区がひそかに造る陸蒸気

世田谷区奴隷海岸雪しまく

とげのあるものばかり煮て台東区

中央区ついに終わらぬ紙芝居

千代田区のどれもまっしろな竪琴

痴話情話お茶屋菓子屋は豊島区へ

中野区の桜吹雪を排泄す

練馬区を練れば練るほど凍滝に

甲冑をつけて文京区に近づく

港区の彫師の夢に南越國

深呼吸まわりはじめて目黒区に

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「椿佛集」
→「以」より

大佛胎内小春日とすれちがう

みがきあげられて枯木が透き通る

掌の中の椿山にて脱糞す

仙台はぎゅうぎゅう詰めの冬陽です

筒を吸い筒に吸われて小春かな

たつきとて枯木のごとき魚を釣る

姉の死に薔薇のつぼみを挿入す

雪おんなあくめの背びれ虹色に

水牛のまぶたに近いバラ星雲

着膨れて世界じゅう安芸の宮島

初夢や背に彫りたる龍昇る

山脈の肩甲骨を持ち帰る

草餅があととり息子として皿に

蛇の入る穴がすなわち巴里支店

犬小屋に姉を飼う日や雪催い

雪おんな縛ればちいさき蛙なり

春愁がブルドーザーと剃刀に

即席の恋即席の雪景色

まれびとのうしろすがたは興福寺

羚羊に遠く蜜柑を固定する

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「えんかるた」
→Nifty Serve 「俳句フォーラム」 現代俳句の部屋 より

二の腕につづく腕なし三途の川

処刑後ははまなすばかり見えている

螺旋なす果実を磨く絵空事

時計まわりの茶話会向日葵に飽きて

夏蜜柑から婦女暴行の残り香

指に咲く夏の建築夏の水尾

黒鯛に無き袖のこと申しあぐ

桃の間の隅のほうへと鳩狂う

弓をひきしぼるかたちに眠るなり

白い馬また見せられる梃子の森

あざらしの口の中こそ核実験

肉喰や鍵のかからぬ子供部屋

煮えたぎる百合に触れたき明治かな

肉体の古都肉体の遠花火

天体よ墓守のいななきが近い

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「ラブホテル」(1996)
→「飛沓舎」より

新宿の月に鬚描く遊びかな

黄落や父を刺さずに二十歳過ぐ

白い寺と黒い寺と金縛りと

炎静かに葡萄畑を風にする

人間の化石たくさん林檎の世

罪人のようにバターを尻に塗る

体毛と羊毛の差やひめはじめ

朝顔が港のようにひび割れる

私からモスクワまでの擦りガラス

花びらのびらびらのある仏間かな

ロココ調の階段ふところに仕舞う

にわとりを招いて夜半の披露宴

凍蝶のような唇黒人に

ソウルミュージックで横浜を組み立てる

あきびんに指から這入る薄暑かな

美しい僕が咥えている死鼠

白夜の僕に父の革靴入れられる

看護婦が冬のけものの耳をして

腰元が好きなかたちの寒卵

歩き出す椅子歩き出さない冬の猫

大田区を洗えば青く色落ちす

雪の日の餃子の中に眠るかな

電器屋のうら永遠に樹氷林

後宮に蟻の数ほど弦楽器

色町の午前六時は航空母艦

黒鳥は南無阿弥陀仏より黒い

蓮池でおむつとりかえられている

欲望にバターを混ぜていない春

鳥帰るいろんな穴に串を刺し

ラブホテルとは夜桜の海に浮く

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「豊胸術」(1996)
→現代俳句協会、邑書林『21世紀俳句ガイダンス』より

深海に眠る月釣る弥勒かな

うつぶせに夏痩せしたるぬいぐるみ

紅をひく僕等に月のなつかしさ

殺し場の永き間にある団扇かな

姉の香に鋏を入れる夏衣

青山通り蝉のぬけがら箱で売る

さかさまの常盤貴子と氷菓子

休暇果つ海の光の強まりて

街古りて白い翼のある檸檬

白昼の性夢を鮒とわかち合う

永き日に豊胸術と叫びたし

落武者が草矢放ちて月招く

京寒し金閣薪にくべてなお

沖縄にまだらの舌をのばす蝶

ひろびろと机を使う菊の花

とつくにのひとのあくびとなるなだれ

常緑樹ほどの寒さの女学校

人形がぽつんと性器である部落

さめやすき紅茶のなかの金魚かな

少女らがこまかく叫ぶ火のまつり

桐壷の更衣太りて春隣

黒潮をときには僧の流れけり

泡雪にアルゼンチンを想いけり

炎から生まれた只の女子大生

真夜中の伊勢丹エプロンが似合う

春昼の階段ゆっくりと羽搏く

健康美はブラウン管の手ざわり

空洞の私あなたは故障中

裁判所までの熱帯雨林かな

泥吐いてサボテンは日時計になる

千代紙と呼ばれた男空を飛ぶ

肥満して五月の水の中にいる

若葉雨の夕べポーランドの巣作り

まつりの夜の細胞分裂の減速

往く雲を一寸法師と名付けたり

イチゴ科のジュゴンと泳ぐ午後一時

きみとぼく上半身はひとつの魚

鮫よりも男娼よりもすきとおる

紫陽花のかわきはじめた門前町

虹食べて生きてるようなおかまです

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「太陰暦」(1995)
→現代俳句協会新人賞応募作(落選)

深海に眠る月釣る弥勒かな

穴のなか虫はっきりと弧をえがく

ファウストを読み終えし日の寒衣

あくびの犬と背中あわせに見るTV

淡雪の雫となりて海遠し

街灯のひとつとなりぬ春の月

牡丹咲き尽くした庭の印度人

マイムマイムの葬列長き小春かな

なのはなと仮名書きして海沿いの駅

東京が銀の魚になって春

百色の絵の具を混ぜて春の泥

春の宵受話器になじむ洗い髪

満月の長髪まとう石の花

高飛車な乳房コスモス乱れ咲く

紅をひく僕等に月はなつかしき

駅前の薔薇一輪に雨一滴

うねりつつ夜の大河はみどり色

キリンから滴る夕陽地平線

地の吐息はらむ夏服極彩色

七月の野菜ジュースは泡だらけ

昼前の大手町には滝がある

浜辺では二人にひとつ蟻地獄

上弦の月から溢れた海である

姉の香に鋏を入れる夏衣

近寄れば月夜の猫が石となる

七色の魚のごとく花火湧く

三日月の薄い唇死後の宴

夏草や墓標は計算尺であり

梅雨明けの新宿西口象の前転

地球は水滴東京の夏暮れて行く

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